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本のご紹介

2023年10月新刊『海、はじまる』


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【書誌情報】

書 名:五行歌集『海、はじまる』
著 者: 宇佐美友見

4/6判・並製・272頁
定価1,430円(本体1,300円+10%税)
ISBN978-4-88208-205-7
発行日:2023年10月1日
装 丁:山碧木星

◆◇宇佐美友見 五行歌集◇◆

私も海の歌を書くことが好きだ。しかし、こうは書かなかった。書かれてみると、ああそうだなーと思う。こう書きたかったとも。彼女は静かに物事の本質を見抜いているように思う。少年のような感性ももった女性、と私は感ずる。しかし、そこにある静かさと控え目なところは、やはり女性の感性である。

(五行歌の会主宰草壁焔太・跋文より抜粋)


◆◇著者プロフィール◇◆

宇佐美友見(うさみ ともみ)
1958年 東京に生まれる
1976年 日本基督教団富士見町教会にて受洗
1977年 恵泉女学園高等学校卒業
1981年 成城大学文芸学部卒業
     都内女子校の社会科教員(のちに福祉科兼任)となる
1994年 五行歌の会に入会
2020年 退職 
現在 五行歌の会同人 東京本郷五行歌会所属
   学童クラブ職員


◆◇目次◇◆

 たゆたう白と
 レースを編みながら
 路地
 まっすぐな風
 歌い継ぐ
 光の中で
 祝福
 乾いた夜に
 草の匂い
 灯り
 大地に口づけ
 並んでスライム
 吊革につかまって
 音ひとつ
 希望のかたち
跋  五行歌の会主宰 草壁焔太
   柳瀬丈子
あとがき


◆◇柳瀬丈子氏跋文より◇◆

彼女が歌集を出す。遂に。ようやく。 今日までの二十五年近い歳月の中で、彼女が育んできたもの。その厖大な蓄積の中から精選された二一三首が十五の章に組まれて、各章毎に短いエッセイが置かれ、歌に誘われる。
 何と新鮮な構成だろう。それは長く高校の教師をしてきた経験からの配慮だろうか。
  (中略)
 ああ鳴っているのだ。私の音叉も──
〈希望のかたち〉アネハヅルの飛翔に希望を託し、この不穏な時代を乗り切ろう、というメッセージは、眠りこけてはいけないという警鐘なのだ。日常の言葉で詠われた鋭い洞察の数々。歌集はひとまず閉じられる。が、更なる出発への予感を孕んでいる。


◆◇あとがきより◇◆

 歌集のタイトルをなかなか考えつかず呻吟していたある日、かつて「羊水の塩分濃度は約一パーセントで、かつて海の中で脊椎動物が生まれたときの塩分濃度と同じである」と聞いたことをふと思い出しました。そういえば子どもの頃、浮き輪につかまって波に揺られ、ぼんやり空を見上げたりしていると、海に抱かれているような気がしたなあ。あれは細胞の一つひとつが、生まれた場所を憶えていたからだったのかもしれない──。そんなことを考えていたらタイトルが降ってきました。
 「海、はじまる」──
いのちは海から生まれ、旅し、空へとのぼり、いつかまた海へと還っていきます。海はその大いなる循環のはじまりの場所であり、いのちの行く先を見つめているのではないでしょうか。私もまた、ここからまた新たな旅を始めたいと思います。


◆◇収録歌 紹介◇◆

ちゅくちゅく
ちゅっちゅく きゅぽん
哺乳瓶に食らいついて
一日十グラムずつ
猫になっていく


ウエストを
きゅっと 絞って
誰に差し出すのか
少女は
花束のよう



無骨な男って
いいよねえ
女二人の きりたんぽ鍋
芹の根っこが
一番人気


寄せる青と
たゆたう白と
私が
いない日の
海を想う


落ちこぼれ って
ことば
悪くないよ
萩の花が
揺れているようで


海を見に行こう
じゃなくて
シラス丼 食べに行こう
って言ったから
笑ってついて行っちゃった

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