2020年8月新刊 『三十年ぶりのおんぶ』
【書誌情報】
書 名:五行歌集 『三十年ぶりのおんぶ』 著 者: 柳沢由美子 四六判・並製・236頁 定価1,320円(本体1,200円+税10%) ISBN978-4-88208-176-0 発行日:2020年8月10日 イラスト:著者 |
◆◇内容紹介◇◆
いちばん、大事なものを知って、彼女は内面の中に、中心を得たのだろう。書くものは、すべて冒頭に述べたような深みと大きさとわかりやすさを持ったものになった。
彼女は、ずっとそれを得ようとして、手探りしていたのかもしれない。目をこらしたり、本を開いたり、考えたり……、まさか、背中で感じとるようになるとは、夢にも思わずに−。
こうして、歌集全体が、大きな交響詩のような物語となった。
蔵書の歌もよく、犬の歌もよく、思いの歌もよい。
彼女の歌がなんといっても素晴らしいのは、歌の仕上げのよさである。彼女の歌には、長すぎるということはまずない。大きな物語を含んでいるのに、簡潔である。
(草壁焔太 跋文より)
◆◇著者プロフィール◇◆
柳沢由美子1952年、群馬県前橋市生まれ 2年間教職を務め退職。結婚後は夫の転勤で 長野県内の各地で暮らす。
子どもの手が離れてから60歳までの23年間、小諸新聞社の記者、編集に従事する。
こもろ五行歌の会の発足時に入会し、18年目。
五行歌の会同人。長野県小諸市在住。
◆◇目次◇◆
笑いころげる大地
垂直の雨
立ち尽くすアリ
ただ待つために来た
びっくり箱
三十年ぶりのおんぶ
はなしたいことがやまのよう
蔵書
ことばになれない思い
白く静かな果実
山が膨らむ
跋 大きな完成への道 草壁焔太
あとがき
◆◇収録歌 紹介◇◆
落葉松林に
降る雨は
ただ
垂直という
美しさ
100羽の
ムクドリが
1頭の天馬の形して
空に
暴れる
バッタが
草むらから
とび出して
幾何学模様のまま
歩いていく
陽ざしが
背中で
深呼吸しているみたい
三十年ぶりの
おんぶ
たいちゃんは
スプーンを
アプーンと言う
ばあは
アプーンの方が好き
ゆりちゃんが
じいに叱られた
泣いたのは
ゆりちゃんと
ばあ