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2019年9月新刊 雅流慕五行歌集『心』


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【書誌情報】

書 名:五行歌集『心』

著 者: 雅流慕
四六判・並製・128頁
定価1,320円(本体1,200円+税10%)
ISBN978-4-88208-165-4
発行日:2019年09月28日



◆◇雪国に生きる人の心、女の情熱が迸る圧巻の歌集◇◆

潰れてしまうほどの
心の重さを
持ってみたい
生きてることすら
忘れるような      雅 流 慕

こんなふうに、心をうたった詩歌は見たことがない。そのうえ、高度に納得できる歌である。心のこの感じを書いた散文も記憶にない。しかし、これは確かに心の真実の一つの極である。
 
雅流慕さんは、何度か優れた歌で私を驚かした。忘れられない歌が何首かあり、それらをいくつか並べて評釈すれば、私が雅流慕さんの歌を称揚する役目は果たせると思っていたが、そのなかでもこの歌は別格のものと感じていた。
 
私は歌の世界にも、世界新記録というべきものがあると思っている。この歌は、そういうたぐいのもので、人類の心の表現のなかに、こういう心という一つのモニュメントのように存在し続けるものである。いわば、心の表現の数々の中のエアーズロックである。
 
また、五行歌という様式が書くことを促した精神性を代表するものでもある。五行歌という様式によって、ここまで真実であろうとする心の欲求であると。
 
私は、彼女から五行歌集の編成を依頼されて、この歌を中心に歌集を創ると思い決め、歌集のタイトルは「心」しかないとも思い決めた。重いタイトルである。小説には夏目漱石の『こころ』がある。
 
なかなか「心」というタイトルは使えない。しかし、この歌を書いた雅流慕さんにだけは許されていいだろう。いや、こういう心の極限を書いたこの歌集にのみ許されるであろう、そう思って歌集のタイトルは『心』としたいと彼女に伝えた。

(中略)

雅流慕さんといえば、まずは雪国の歌と思う。それくらい雪の重さとそれと戦う人の心の強さが、彼女の歌のテーマとなっている。つくづく屈することのない歌を書く人である。私はこの歌は、長いその戦いとつながっていると思う。
(五行歌の会主宰・草壁焔太跋文より)  






◆◇著者プロフィール◇◆
雅流慕(がるぼ)
1949年 秋田県横手市増田町生まれ
1997年 五行歌の会入会
2008年 雪葩ゆきはな五行歌会立ち上げ
◆◇目次◇◆

はじめに
第一章 地吹雪を
第二章 やがしめぁ
第三章 翔 ぶ
第四章 虹の素足
第五章 赤とんぼ
第六章 心
第七章 鳥海
跋     草壁焔太
あとがき




◆◇収録歌 紹介◇◆

姑が死んだ
野武士は
矢折れ
刀尽き
くっと逝った


鮎の腹を裂くと
どろり
臓物と
西瓜の香りが
鼻をくすぐる



潰れてしまうほどの
心の重さを
持ってみたい
生きてることすら
忘れるような


ほう
めずらしい
光が降ってくる
柔毛のような
粉雪を纏う



ドードー
ドドドドドー
雪解け水は
ドの音だけで
奔る奔る


真夜中の
無言の囁きは
恐ろしい
柩の中まで
雪が降る



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