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本のご紹介

2017年12月新刊 詩流久『白無垢を着て』


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【書誌情報】

書 名: 『白無垢を着て』

著 者: 詩流久

四六判・上製・302頁+巻頭カラー口絵8P
定価1,650円(本体1,500円+税10%)
発行日:2017年12月12日
ISBN978-4-88208-153-1


◆◇著者プロフィール◇◆

詩流久(しるく)
1952年 埼玉県久喜市生まれ
1971年 埼玉県立不動岡高等学校卒業
1975年 獨協大学外国語学部卒業
34年間、蓮田市、久喜市の小学校教諭として勤務
2011年 五行歌の会入会

◆◇目次◇◆

1  100 %元気 !!
2  チョーク一本
3 だからこそ向日葵が好き
4 光 そのもの
5 ショパンによく似た青年
6 大大大号泣
7 新しい箸
8 空気の薄い日
9 一番の手柄
10 勝負の春
11 白無垢を着て
12 なーんにも
13 こんなに寂しいのに
14 ただ嬉しい
跋 人間の一番の喜びへ  草壁焔太
たくさんのありがとう(※あとがき)
アルバムより




◆◇人間の一番の喜びへ◇◆

いままで読んだ歌集の中で、いちばんわかりやすい歌集だと思った。人は、何かを表わすとなると、どこかひねりたくなるものだ。よく一句ひねるとかいったりするのは、その心理をいうものであろう。
詩流久さんは、ひねりのない、真っ直ぐな性格である。書いていることに、ためらいもなく、いつわりもない。おそらくその行いもそうであろう。もし天性の先生というものがあるならば、こういう人ではないかと私は思う。

 勉強より
 大事なものがあるって
 人は言うけど
 勉強は
 生きる希望だよ

 歓声と溜息に分かれる
 新学期の担任発表
 生徒が教師を
 評価する
 緊張の瞬間
 
いままで、先生という職業に従事した人と何人にも会ったが、この人が自分の先生だったらよかったなと思える人は数人しかいない。なかでもいちばんいいなと思うのが、この先生である。
(中略)

この人は、率直であると同時に情に溢れている。弱い人、くじけた人を放っておけない人である。こういう人は、まわりの人々を全員看護し、介護する運命にある。人を思う感情がこの人たちを抱き上げようとするのである。
心が明るく、真っすぐで、思いも深く透徹しているから、歌に説得力がある。人はみな彼女に対して「ハイ」と言うようになるらしい。自分に向ってくる真情に逆らえないからであろう。とくに癌と戦う夫との関係、情のやりとりが素晴らしい。
 彼女の結論は、私たちの最もうなずくうれしいところへ至る。

 嬉しい ただ
 嬉しい
 あなたがいること
 あなたが笑うこと
 あなたと生きること。

               (五行歌の会主宰 草壁焔太 跋文より)




◆◇著者あとがきより抜粋◇◆

 歌集の刊行は12月12日。草壁焔太先生の粋な計らいです。これは夫と私の誕生日。高校の同級生だった夫とは、全く同じ日に産まれ、十五才で知り合い、今年五十年。結婚して四十年になりました。五年生存率 30 %の病を、夫は乗り越えようとしています。支えて下さった癌センターの医師、すぐに手を打ってくれた義兄に心から感謝しています。「命」は当たり前ではない。そこには何か分からないけれど、大きな力が働いて、生きろと言われているように感じます。







夫の癌転移
義母に告げられない
作り笑いが
凍りついた
酷暑


浴びせられた激しい言葉は
全て流れた
懐かしさだけを
搔き集めるように
義父の墓を掃く

パンパカパーン! と
一斉に口を開いて
新春を寿いでいる
老人ホームの
ラッパ水仙


真夏の太陽を
一人占めして
カーンと暑さを
咲ききっている
カンナ

教会は からっぽ
モスクも からっぽ
寺院さえも からっぽ
神や仏や魂は
人の心の内に在る


ねえ、神様
長生きするって
きれいごとばかりじゃないけど
本当にいいことなんです、
よね?


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