新刊ピックアップ!

本のご紹介

2015年9月の新刊!

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書 名 ◇ 『硝子離宮』

著 者 ◇ 南野薔子
価 格 ◇ ¥ 700+ (税)

新書判・並製・168頁
定価770円(本体700円+税10%)
発行日 2015年9月28日
ISBN ISBN978-4-88208-137-1


◆◇著者プロフィール◇◆

南野 薔子

1966年7月26日福岡県北九州市生まれ。
1989年九州大学法学部卒業。
1998年九州大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。
2004年九州大学大学院人間環境学研究科行動システム専攻心理学コース博士後期課程修了。
福岡県宗像市在住。

1997年五行歌の会入会、1998年同人。
塔野夏子の筆名で自由詩の創作も行っている。





◆◇ 美の極を造る烈しさ ◇◆

 花を飼いたい
 凶暴に乱れ咲く花
 あらゆる欲望を喰んで
 昂然と
 美しくなる花

 歌集の冒頭にこの歌を置いたのは、ベストの選択であると思った。この作者は全てを知っている。生命が何であるか、それを突き動かすものが欲望に過ぎないこと、それによって美的なものを恣にしたいと宣言しているのである。  いささか抽象的に見えるこの歌集は、花々を鷲掴みする猛禽の貌を最初に見せる。
 冀うものは美であるが、それを自分の意思のままに従わせないわけには行かない、というこの歌集全体に繰り広げられる姿勢が最初に示されている。

 心の
 ほとりに
 離宮を造る
 美しい刹那ばかりを
 棲まわせる

 跋を書くために何度か『硝子離宮』を読んで、長く雑誌の原稿として彼女の歌を読み続けてきたのにもかかわらず、初めてその歌群の実体を見たという気になった。初めて感じたことはいくつかあり、その一つは、ああ、彼女の歌のテーマは男の美だったのだということだった。こんなに男性を美化した歌集をほかに思い出せない。
 ということは、完全な男、あるいは少年に対する恋がテーマで、硝子離宮は、彼女がそれらの美少年のイマージュを幽閉し、美の極を造り込む彼女の精神の城である。ただ南野さんは一度も「美少年」という言葉は使っていない。

(中略)

彼女の美意識の選ぶ絵の具は主として黒と銀である。僅かに暗緑と青、深紅を用いる。これが言葉に対する厳しさの証しであるとでもいうように、烈しく禁欲的である。
しかし、あくまでも彼女は独りではなく、強い欲望と美意識によって至高の男? あるいは少年? あるいは恋のはかなごとを造り込む。
 あまりの願望の烈しさに美意識は具体以上の確かさを与えられる。
(五行歌の会主宰 草壁焔太 跋文より)

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