2020年2月新刊 漂彦龍五行歌集『コラージュ』
【書誌情報】
書 名:『コラージュ』 著 者: 漂 彦龍 四六判・並製・130頁 定価1,100円(本体1,000+税10%) ISBN978-4-88208-170-8 発行日:2020年2月29日 |
◆◇辛辣さと純情と◇◆
彦龍氏実質3冊目の五行歌集となる。
好評だった『それって食えるのか』『上映禁止』の数首も採録。
物事や世の中を辛辣に見据え、容赦なく書きつける。作者の抉り出す真実に、はっとさせられる。
かと思うと、恋の歌は、悲劇で切ない。
映画や、アート、音楽への造詣も深く、独自の美意識からも言葉が切り取られる。
本書も、彦龍氏ファン待望の一冊といえよう。
◆◇著者プロフィール◇◆
漂 彦龍(ひょう・ひこりゅう)2005年、五行歌の会入会。東京都在住。予備校講師、日本語講師。
第一歌集『それって食えるのか』、第二歌集『上映禁止』(共に市井社)。
◆◇目次◇◆
今日だけのケーキ
藪の中
夏のラッセル車
チェルノブイリの観覧車
熊ん蜂の機体
幕間 二つの歌集より
もの創るとは
残照を前に
シュワッチな日々
アイヒマンの微笑
サワディーカップは
解説 村田新平
あとがき
◆◇解説より◇◆
表題の「コラージュ」という言葉ほど、著者が自分の歌の方法の特質を明確に把握していることを示す言葉はないでしょう。
コラージュ(仏collage )とは、「糊で貼り付けること」を意味する普通名詞ですが、 二十世紀のはじめに、もともとは対応関係のない材質や映像を、本来の用途とは全く別のやり方で結びつけることによって、異様な美しさやユーモアや風刺や夢などの、新しい心象風景を現出させる技法を指すようになります。
マックス・エルンストなどのダダイストやシュールレアリストらが使い始め、やがて映画や写真のような他の視
覚芸術や、文学にも転用されるようになりました。表題も同じ意味だと思います。
(村田新平氏・解説より抜粋)
◆◇著者より◇◆
この歌集は、漂彦龍の筆名での第一歌集です。蛇夢の筆名で出した、『それって食えるのか』『上映禁止』を合わせて数えると、私にとって第三歌集になります。
歌集の幕間「二つの歌集より」は、前記の二つの歌集の中の作品を採録しました。
あとは、月刊『五行歌』に掲載した歌や、いくつかの歌会で掲出したものを、新旧の筆名にこだわらずまとめました。
(著者 あとがきより抜粋)
◆◇収録歌 紹介◇◆
巧緻に
デザインされた
毒針のように立つ
クラナッハの
ビーナス
始皇帝のように
我らも残すのか
原発の墓と
フレコンバッグの
黒い兵馬俑
淡雪が
あるのなら
淡恋もアルだろう
人に触れる前に
消えてしまうような
口接けても
通電しなくなり
私共は
絶縁体と
なりました
カラータイマーが
いつ鳴り始めるかは
わからないけど
シュワッチな
日々を生きている
犬に
許される安楽死が
人間には許されない
ディストピアか
ユートピアか