2021年2月新刊 『青の音階』
【書誌情報】
書 名:『青の音階』 著 者: 伊東柚月 四六判・並製・276頁 定価1,430円(本体1,300円+税10%) ISBN978-4-88208-181-4 発行日:2021年2月17日 |
◆◇内容紹介◇◆
跋文でも語られるが、複雑な内省や気付き、励ましなど多彩な感情が交錯する作品群である。自分の心をまっすぐに見つめる強さも、凹むときも、他者を思いやる優しさも青の階調(グラデーション)となって心を揺さぶる。
この歌集はたいへん複雑な人間の心のあらゆる層を書き連ねたような構造になっている。これだけ複雑なものを見たことがないといっていい。(中略)
自分に向かってこれほど容赦ない歌は、なかなか見ない。そのうえ、彼女をとりまく日常、環境は、たいへんそうに見える。このほかにも、すばらしい両親が、壊れていく歌もあり、すっと何事もなく生きてきたかのように見える伊東柚月という人が、大きなものを乗り越えてきた人であることがわかる。
自分に辛辣な人は、強いからそれができる。プライドの高さ、強さがあるからそれができるのである。
(草壁焔太五行歌の会主宰・跋文より)
◆◇著者プロフィール◇◆
伊東柚月(いとう・ゆづき)
東京生まれ東京育ち
12歳のとき福岡へ転居
西南学院大学文学部卒
2002年 五行歌の会入会
九州五行歌会所属
福岡県糸島市在住
◆◇目次◇◆
月の肩
それがなんだっての
肩甲骨の窪み
たゆたっている
痩せ女の意地
幸せになってゆけ
青い小花のワンピース
生まれてきたのは
君という未完成
張りつめた青を分けても
跋 草壁焔太
あとがき
◆◇収録歌 紹介◇◆
いっそ
大きく凹もう
いつか
多くを満たす
器になるのだ
風も土も
放埓な生の息遣い
過ちの一つも
落ちていそうな
五月の庭
アゲハ蝶
ふわりふわりと
海を渡ってゆく
あなた一人足りないままの
夏を巻きとるように
たくさんの
失敗を重ねて
ブサイクな
コラージュだ
わたしだ
恥ずかしいのは
愚かしさではなく
愚かな自分を
隠そうとする
小賢しさ
泣けないのは
プライドのせい
けれどプライドよ
白骨の杖のように
私を起たせている