2022年6月新刊『コンチェルト 〜協奏曲〜』
【書誌情報】
書 名:五行歌集 『コンチェルト 〜協奏曲〜』 著 者: ともこ 四六判・並製・230頁 定価1,320円 (本体1,200円+税10%) ISBN978-4-88208-193-7 発行日:2022年6月20日 |
◆◇ともこ五行歌集◇◆
ともこさんの歌集は、構成美がきわだつ。それは、彼女の輝かしい個性でもある。
私たちは、彼女の歌も、ほかの人の場合と同じく、一つ一つで見てきたが、彼女の場合、歌一つ一つは、単子(モナド)であり、彼女を作っている多くの意味の一つだったのだということが、この歌集でわかる。
だから、彼女の歌の一つ一つの真意は、歌集になって初めてその歌の居場所を得、鳴り響きだしたのだ。
こういうことは、初めてのことである。心の底から驚いた。
全体がわかって、初めてわかるということは、小説を読むときに感ずることだ。彼女は、五行歌という単子を構成して、自伝小説を描き上げたのである。
最初の単子は、戦争終結とともにきた、心身震えるような経験を歌った歌群である。
昨日までの
支配者を
屠って吊り下げた
恨の形を
忘れられない
この歌集は、協奏曲となっていて、四楽章で構成される。第一楽章は、この戦争のテーマから始まる。しかし、五行歌としては、書きやすかったわけではなく、恋を歌う第二楽章が先に出来、次にこの章を書いたという序歌がある。
第二楽章 恋から
始めた コンチェルト
第一楽章 戦争を
ようやく書けて
さあ終章を詠おう
最後まで読むと、彼女の一生を見て来たのだなとわかる。始まりの怖気をかきたてられるような衝撃から、長い時を経て、豊かな花園のような一生となったのだった。
◆◇著者プロフィール◇◆
ともこ
1942年1月 京城生まれ
1945年秋 大阪に引揚げ
1946年〜 広島に住む
1965年〜 東京転勤以降川崎・世田谷・芦屋・ 岡山・大宮等転居
1992年 広島定住
2006年3月 五行歌に出会う
2007年 五行歌の会 会員
2012年 五行歌の会 同人
◆◇目次◇◆
第一楽章 戦争
戦争
ヒロシマ
平和
ヒストリイ1(エッセイ)
ヒストリイ2
第二楽章 恋
生涯の恋
後の恋
あこがれの恋
第三楽章 生きる
生きる
父母
娘
息子
孫
弟
夫
姑
震災 被災
第四楽章 つれづれに
つれづれに
出会い ─ 歌
出会い ─ 歌人
ふりかえれば
跋 草壁焔太
あとがき
◆◇収録歌 紹介◇◆
幼いなりに
戦争を
経験していることを
心の重奏の
楽譜としたい
ええなあ
すずめさん
ごはんたべてはる
窓辺でつぶやいて
母を泣かせた日
もう絶対に
戦争はしないで
外地生まれで
ヒロシマ育ちの
少女の願いは生涯一つ
我慢の
原点は
引揚時の恐怖から
泣いたら
置いて行かれる
この胸に
残響の
ひとつあり
遠い遠い
出逢いの奏でるもの
やせた?
そのひとことで
私はほどける
あなたの視線に
抱きしめられて