2022年3月新刊 『まだ知らない青』
【書誌情報】
書 名:五行歌集 『まだ知らない青』 著 者: 水源 純 (みなもと・じゅん) 新書判・並製・184頁 定価880円 (本体800円+税10%) ISBN978-4-88208-192-0 発行日:2022年3月2日 |
◆◇水源純五行歌集◇◆
生きとし生けるものにとって、歌は毎瞬にある。この頃、私が繰り返し言うことであるが、「まだ知らない青」という言葉は、まさにそれを知る人の言葉だと思う。私たちは、毎瞬、青を見るかもしれないが、それでもまだ知らない青があるのだ。
私は、水源純の言葉に、私の文化的なDNAを感ずることが多い。
この二十数年、ずっと隣にいて同じ仕事をしてきた。
(中略)
見つめあう時間は
ながいみじかいよりも
その深度
一瞬で
深海までゆける
これが彼女の人づきあいの仕方、人の理解の仕方であろうと思う。瞬間ですべてがわかると言っているのだ。
ことばの奥に
在る
まあるいものを
やりとりしているような
私たち
この「まあるい」、彼女の個性が最もよく出た言葉はこれである。だいたい彼女の歌はひらがなのやわらかさとまるさで成っている。この「まあるい」という言葉は、他の人の歌ではあまり見ない。つまりこれは彼女の個性である。
まあるいものは、彼女の心のありようにきわめて大切なものである。彼女の心のありようそのままである。
(中略)
この歌集は、彼女のうたびととしての歴史の総集編のようなものである。真実、心、思い、人について優れた歌が、たくさんある。彼女は、人生のすべてをあますところなく、とらえ、描いてくれた。
(五行歌の会主宰草壁焔太・跋文より)
◆◇著者プロフィール◇◆
水源 純(みなもと・じゅん)
1975年生まれ。千葉県野田市出身、東京都在住。
1995年に五行歌の会入会、草壁焔太に師事。
1997年より市井社(五行歌の会事務局)で月刊『五行歌』の編集に携わる。
2000年にAQ歌会を、2005年に横浜歌会を立ち上げる。
2006年より千葉県のタウン情報誌『とも』の五行歌欄選者。
著書に『この鳩尾へ』『ほんとう』『しかくいボール』(すべて市井社刊・五行歌集)などがある。
◆◇目次◇◆
咲くちから
手
楔 哀悼の歌
立入禁止の柵
エキストラ
少しでも永く
楷の木
アイマスク
私の土
まだ知らない青
まあるく熟る
跋 草壁焔太
あとがき
◆◇収録歌 紹介◇◆
何度も見上げた空なのに
こんなに青い! と
心は驚愕する
とにかく歩こう
まだ知らない青があるはずだ
見つめあう時間は
ながいみじかいよりも
その深度
一瞬で
深海までゆける
あなたに
触れれば
生まれるもの
言葉、言葉、それから
ことば
願わないと
決めたのに
願ってもいいみたいに
あなたが
星を降らせるから
一人の男を
心に棲まわせて
あぁ
懲りない
どうぶつ
かなしいって
言ったもん勝ちみたいだ
かなしいの椅子取りゲームで
あぶれたかなしみよ
ここにおいで