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本のご紹介

2023年6月新刊『備忘録』

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【書誌情報】

[そらまめ文庫 さ2-1]
書 名: 五行歌集『備忘録』

著 者:佐々木エツ子
新書判・並製・136頁
定価880円
(本体800円+税10%)
ISBN978-4-88208-201-9
発行日:2023年6月25日

◆◇佐々木エツ子 五行歌集◇◆

 年金が入って
 口紅を買った
 綺麗なバラ色
 せめては
 秋の美術館へ行こう

 こうした老境の心を描いた歌も、よく伝わる。高齢化の時代と言われるが、高齢者が自分の心をどうするかは、今の高齢者が初めて直面した課題なのである。私たちは、高齢者の心をどうするか。それは、次に続いて来る後輩たちへの贈り物となるだろう。
 この歌集で最も衝撃的なのは、「3・11」の災害時の著者の経験と歌であるが、実家の滅びを歌った「青嵐」の凄惨さも、ずしりとくるところがある。彼女の理性と感性は、さすがに、しっかり書き尽くしてもたじろがない。
 心臓の手術もして、卒寿も迎えられた。

 あと100年ぐらい
 生きてみたい
 あとの世紀が
 平和か カオスか
 見てみたい

 私は、この歌を見て嬉しかった。私たちは、どうしても知りたいのだ。見届けたいのだ。同い年の人の、同じ気持ちを感じた。

(五行歌の会主宰草壁焔太・跋文より抜粋)


◆◇著者プロフィール◇◆

佐々木エツ子(旧姓 須藤)
1932年 東京に生まれる。太平洋戦争が激しくなり小4で両親の郷里の福島市に疎開し、約10年の少女時代をすごす。
1957年 東北大学文学部英文修士課程修了(MA)、 1957年から2003年まで、約半世紀教壇の常勤職を務める。
2004年 岩手五行歌会を発会、2006年から代表。盛岡市在住。
 著書は、『負の国の住人たち』(1997・シェイクスピア試論・近代文芸社)、『夢のあと、夢のつづき』(2003・エッセイ・熊谷印刷)など。五行歌集は、『夫恋い』(2010・五行歌第1集・市井社)がある。
趣味は、観劇、茶道など。


◆◇あとがき から◇◆

 この『歌集』には、突然人生が騒がしくなった私の70代の後半から80代を過ぎ、90歳になるまでの10年近くの出来事や心の動きを、出来事順に編集してあります。「五行歌」の会員になってから、19年目にもなりますが、まだ秀歌らしいものが詠めておりません。本の題を『備忘録』としたのも、そのためです。個性と思ってお読みください。
 

(著者・あとがきより抜粋)


◆◇目次◇◆

青 嵐
味見の皿に
白い花びら
3・11
ランドセルは玉手箱
タラの芽のてんぷら
恋侘び
侘助ひとつ
新しい、思いの歌
鯛で海老を釣る
「死」は「命」の完成
金 星
深海の難破船
  跋 草壁焔太
  あとがき


◆◇収録歌 紹介◇◆

郵便局のかえり
自転車おりて
微笑んでくれた
その時から
その人との恋が


もう こんなこと
無いと思っていた
大事に育てよう
おたがいを
高めながら

津波が攫った
人々の夢
夏草は何を語るか
そ知らぬ顔の
青い海


「死」とは
「命」の完成である
後悔しない
一歩一歩を
進められたら

人に酔い
言葉に酔い
酒に酔う
いい人生じゃないか
ビバ米寿


年金が入って
口紅を買った
綺麗なバラ色
せめては
秋の美術館へ行こう

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