2022年8月新刊 『故郷の郵便番号』
【書誌情報】
[そらまめ文庫 ふ1-1] 書 名: 夫婦五行歌集 『故郷の郵便番号』 著 者: 浮游&仁田澄子 新書判・並製・160頁 定価880円 (本体800円+税10%) ISBN978-4-88208-196-8 発行日:2022年8月20日 カバーイラスト:仁田澄子 |
◆◇浮游&仁田澄子 夫婦五行歌集◇◆
安曇野生まれと京生まれ、東京で恋して(たぶん)、京都でいっしょに。
五行歌人には珍しいスポーツ選手である。円盤投げと砲丸投げの選手同士だったと聞いたことがある。
どちらかといえば、奥さん主導かとも思えるが、あんがい茫洋とした夫を頼りにしているのは、賢そうな奥さんのような気もする。
奥さんの歌は知的で、均整がとれている。
旦那さんの歌は、おなかぽんぽん。しかし、京生まれ京育ちの何かがある。
夫婦が競い合う郵便番号は京都のそれであろう。いい夫婦だな、と、羨ましくなった。
戻ってきた故郷の
郵便番号を
いつまでも覚えられない私に
妻は勝ったと
思っているにちがいない 浮 游
帰ってきた故郷の
郵便番号を
覚えない夫に
私が勝ったと思っているって?
なんで判ったのだろう 仁田澄子
◆◇著者あとがきより◇◆
私が五行歌と出会ったのは、東京在住時の二〇〇六年頃、新聞紙上に投稿したのをきっかけに、吉祥寺歌会に誘われたのが、歌会参加の始まりでした。
主人(浮游)が五行歌を始めたのは、私より七、八年後だったと思います。歌会後の余韻会に参加して、何故かメンバーと気が合って、気がつくと次回から歌会に参加するようになっていました。
京都に帰ってからも、これも弾みで受けた京みやび歌会の代表となり、今では、私以上に、近畿各地の歌会に顔を出しています。
〈児童館のうた〉は、京都に移ってから勤めている児童館(学童クラブ)で、日々接している子どもたちの様子を詠んだものです。
〈安曇野〉は、私の生まれ故郷で、主人が絵を添えてくれた本の中より選びました。
見知らぬ土地に来て、五行歌があって本当に良かったと思っています。
手元に『風子の五行歌集 掌編70歌』という小冊子があります。新潟の風子氏が古希をむかえられたおり出されたものです。
私も今年、古希を迎えます。よし真似をして『浮游の五行歌 掌編70歌』を作ることにしました。
よそさんはよそさん、家は家と個人を大切にするこの町では、人の真似をすると「まねし漫才・・・」と揶揄われます。京都を四十年近く離れた東京で生活していた私、半分は関東人と開き直り選歌にかかりました。
一人こそこそ作業をしていると、興味津々の妻が「私も歌集作りたいなあ」「歌集を作るのならいっそのこと、二人でそらまめ文庫から」と宣わるのであります。
恐れを知らぬ何たる暴挙と二の足を踏む私でしたが、そこは妻唱夫随の我が家、妻に従うこととなりました。
◆◇著者プロフィール◇◆
浮游&仁田澄子(ふゆう・にったすみこ))
浮游(仁田晶夫)
京都市出身
1975〜2013 東京都公立学校教員
京都市在住
五行歌の会同人、五行歌京みやび 代表
仁田澄子
長野県出身
1971〜2014 東京で暮らす
京都市在住
五行歌の会同人
著書
五行歌絵本『キラキラ光るこどもたち』
(絵・浮游/文・仁田澄子)
五行歌絵本『安曇野』(絵・浮游/文・仁田澄子)
絵本『そらいろのピアノ』(仁田澄子)
◆◇目次◇◆
澄子 うた
台所の奇跡
京に来て
夫
折々のうた
絵手紙
旅
児童館のうた
安曇野
浮游 うた
僕宝
支離滅裂
妻
京都の歌
跋 草壁焔太
あとがき
◆◇収録歌 紹介◇◆
笑い始めた山の 仁田澄子
あちらこちらに
馬酔木の花
春を寿ぐ
かんざしの様
どでかい
聖護院かぶの脇で
こかぶが
なぜか
粋がっている
庭で花火
孫と戯れる夫
煙の向こうに
遠い日の
少年の顔
安曇野に
風が渡る
土に生きた父が逝った
最後に口にしたのは
自分の作った新米
流石に上洛とは 浮 游
書きません
代わりに入洛と
プライドは高い
我らの地元紙
行水 浴衣
祖父母に手を引かれ
憧れの
ソフトクリーム
宵山の四条通
天地引き裂き
古都を一喝
梅雨の雷
油日照りの
夏が来る
怪しきものを
探し求め
古都の大路小路を
さまよい歩く
幻想と現実のはざま