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2018年4月新刊 倉本美穂子五行歌集『ふたりして』

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【書誌情報】

書 名:『ふたりして』

著 者: 倉本美穂子

四六判・上製・310頁
定価1,430円(本体1,300円+税10%)
発行日:2018年04月08日
ISBN978-4-88208-155-5


◆◇著者プロフィール◇◆

倉本美穂子(くらもと・みほこ)
1951年10月 広島市安佐北区生まれ
1998年09月 五行歌の会入会
五行歌の会ひろしま歌会会員・役員
五行歌の会同人

◆◇目次◇◆

一の章 三月の雪
二の章 涙の粒
三の章 夫さん
四の章 息子たちのケイタイ
五の章 いいえの〜
六の章 あじさいのはなびら
七の章 母子草
八の章 真昼の月
九の章 昭和一桁
十の章 梅鉢の家紋
十一の章 命の半分
十二の章 哀しい自由
十三の章 ドラフト会議
人を安らぎいざなう心  草壁焔太
あとがき




◆◇人を安らぎいざなう心◇◆

自然で、肩の力が抜けていて、とくに重大なことをいっているのでもないのに、読む人の心をよいところへ導いている。

道端が
急に明るくなった
秋桜が
いちどきに
咲くんだもの


死 までも
競うように
本家のはは
あね
同じ年内に
逝く

 このなんでもないような歌が、私の心の中心にある涙の入口に誘うようなのだ。涙が出るのは副交感神経の働く状態だという。それは睡眠などやすらぎの状態とも隣り合っている。
 人は活動するときは交感神経のよく働く状態にあって、そこでは戦っている。だから、心の底にやすらぎを求める気持ちがある。倉本さんの歌は、多くが戦いに疲れた心をそこへいざなってくれるのではないだろうか。
(中略)
 登場人物がよく書けていて、真実そのものといっていいドラマが書けている。彼女は自然体の歌を書きながら、大きな仕事をしていたのだと思う。
 歌は短いが、その瞬間の命を表わす、ときに短い歌が長い年月を表わすこともある。
 これに対し、歌集は長編小説に当たる、うたびとは自身の気持ちを瞬間瞬間表わしながら、その一生で長い物語を書くのだと、私は言っている。
 この歌集は、それを説明するのにぴったりのものとなった。
 この物語は、永遠に続く愛の物語であろう。
               (五行歌の会主宰 草壁焔太 跋文より)




◆◇著者あとがきより抜粋◇◆

 この20年の間には、楽しいことも嬉しいことも多くありましたが、父の死、夫の死という悲しい経験もし、歌を詠む気力はないと思うのですが、ふと、浮かんでくることもあり、書き留めることによって、歌の中で、父も夫も生きた証となっているこ とに気付かされました。そして、息子たちや孫たちの何気ない言動も、書き留めていなければ、きっと忘れ去ってしまうことが、歌集として残すことにより、その時その時の面白さ可愛さを、アルバムのように捲ることができ、私にとって大切な一冊にな るのではと思いました。(倉本美穂子)







ふくよかな胸へ
懐紙を
すっと忍ばせたよう
かさなる稜線に
三月の雪


道端が
急に明るくなった
秋桜が
いちどきに
咲くんだもの

母を看ながら
なぜか
頭を撫でられているような
気持ちに
なることがある


この命
半分削ってもいいと思った
が 全部はだめ
親を看る
命も要る

力の失せた
夫の手を引き寄せて
そっと乳房にあてがえば
幽かな
指の動き伝わる


夫が余命を
告げられた歳になって
つくづく思う
穏やかに過ごしてくれたのは
周りの人への夫なりの愛だったと


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