2015年8月の新刊!
書 名 ◇ 『心奥のルージュ』
著 者 ◇ 村岡 遊 装 画 ◇ 大澤喜八 四六判・上製・282頁 定価1,320円(本体1,200円+税10%) 発行日:2015年8月20日 ISBN978-4-88208-136-4 |
◆◇著者プロフィール◇◆
村岡 遊
1939年 兵庫県神戸市生まれ
1963年 上京
布花制作 教室開設
2001年 五行歌の会入会
同人
清瀬五行歌会代表
埼玉県新座市在住
◆◇ 個のきっさき ◇◆
アメリカの老人ホームに五行歌の話をしに行ったときがあった。二〇〇九年の五月頃であった。(中略)
「詩は、自分のいちばん深い気持ちを書くものです。あなた方にも最も激しく愛した人があったでしょう。ここに一つの五行歌があります」
本物の愛は
手放してから
気づく
凄絶な
理解 村岡 遊
ほとんど意識を失ったような人々が、夢みているものは、この本物の愛だろうと、私は直観的に思い、この歌を読んだのだった。
読み終わったとき、ざわざわっと身を起こす人たちがおり、いくつかの眼が開いて私を直視した。
私がとっさにこの歌を思い起こしたのは、この歌の心のデッサンの鋭さ、短いなかに、人の心の芯を衝く情熱を表しきっているからである。
村岡さんは、個としての感情の力を、闇を走る黒豹のようにジャンプさせた。こういう感情の力は、老人ホームの真夜中には跳梁するはずである。
これには村岡遊の個のきっさきが必要だった。
しかも、その黒は赤にも変わる華やかさと鮮やかさを持ち、また瞬時にして純粋の白にも変わる激しさを持つ。これが村岡さんの個の世界である。個は力であり、色彩であり、智恵の深さでもある。
村岡さんは日本のような制約された世界でも個としての無限変数であり続けたから、世界に通用するのだと思った。
(五行歌の会主宰 草壁焔太跋より)