2015年5月の新刊
書 名 ◇ 『ありがとね、ありがとね、ありがとね』
著 者 ◇ ひまわり 装 画 ◇ 喜多正直 四六判・上製・292頁 定価1,320円(本体1,200円+税10%) 発行日:2015年5月2日 ISBN978-4-88208-135-7 |
◆◇著者プロフィール◇◆
ひまわり
1956年 大阪生まれ
1979年 大阪市立大学卒業
1996年 学習教室開設
1999年 五行歌の会入会
1999年5月2日、この日は私が初めて大阪五行歌会に参加した日です。当時、家庭では長男が反抗期のまっ只中。そこからつかの間でも逃れたいという思いからの参加でしたが、「五行歌は何の制約も無く、自分の気持を五行で表せばいい」と聞いて、軽い気持で「だったら、出来そうだわ」と続けることになり、今日に至ります。泣きたいことも、辛いことも五行にする事で自身の励みになっていたように思います。
今回、歌集刊行にあたって、これまでに書いた歌をすべて読み返しました。すると、辛いことを書いたはずの歌を読みながら思い出すのは、その頃、支えてくれた人の優しい顔、励ましの言葉だったのです。一人で頑張っていたつもりが、実は多くのみなさんに支えられていたのですね。タイトルを「ありがとね、ありがとね、ありがとね」と決めたのはそのときです。この言葉は2年前の母の日に、当時独り暮らしを始めて数ヶ月の長男から贈られたメッセージですが、以来、私の大好きな言葉となっています。まずは私を支えてくださった多くの皆さんに、ありがとね、ありがとね、ありがとね。
歌集上梓を決めたときから、表紙絵は次男に描いてもらいたいと思っていました。観音様のような子ですから(笑)、快諾してくれることを信じてはいたのですが、何しろ私の作品のほとんどをこれまで見せたことがないので、どんな反応がくるのかと、ドキドキはらはらでした。でも、数日後、「五行歌ってアルバムみたい。でも、アルバムだったら好い時しか残らないけど、悲しいことも嫌なことも残って、そこがまたいいなあ・・・。」と感想を聞かせてくれました。
長男から貰ったメッセージをタイトルに、そして次男の絵が表紙を飾ってくれる、初めての歌集を出せた私は幸せすぎる母です。息子たちにも、ありがとね、ありがとね、ありがとね。
(著者あとがきより)
◆◇ いくつもの花束 ◇◆
勉強し続けないと/僕の頭は忘れるんです/だからずっと勉強します/ああ、この子に/花束をあげたい
この歌を読んだ瞬間、私は呆気にとられて立ち往生し、しばらくして泣いた。勉強の本まで書き、自慢たらたら、いい点をとったことを言いまくった私にも、ずっとこういう不安はあった。人は能力を試され続ける。
(中略)
能力についての不安とそれに対する最も清々しい態度を、この少年はみつけた。私も作者といっしょになって花束をあげたいと思った。花束は作者にあげた。
『五行歌』の表紙にこの歌を使った。この二人に敬意を払う私にとっての唯一の方法であった。
ここに見る作者の弱者に対する優しさのようなもの、これは彼女が五行歌にかかわってくれたときから一貫していた。それが大きな花となった気がした。私はこの歌を世界中の子どもに見てもらいたいと思う。
もちろん、こういう不安を覚えているいい大人にも。
彼女の作品が私たちを驚かせたのは、最初は別のテーマであった。この本の冒頭に見る息子の反抗である。五行歌運動は、今、始まって二十年ほどだが、この新しい様式は誰がいかにその人の真実を明かし、歌ってくれるかにある。
その人がいままでにない詩歌を書けば書くほど、五行歌の世界は真実となり、豊かになる。真実は、多くの場合、心の傷である。その傷が新しい花を咲かせる。人は感性と思いとでその傷をカバーしようとする。傷に載せた葉が花と化すようなことがある。歌はそういう奇跡であろう。
最初の歌は、「物が覚えられない子」という傷から生まれた大きな花であろう。
(五行歌の会主宰 草壁焔太跋より)