三葉かなえ『プロジェクションマッピング』
【書誌情報】
書 名: 『プロジェクションマッピング』 著 者: 三葉かなえ 四六判・並製・124頁 定価1,100円(本体1,000+税10%) 発行日:2017年11月7日 ISBN978-4-88208-151-7 |
◆◇著者プロフィール◇◆
三葉かなえ(みつば・かなえ)
1990年、埼玉県生まれ。
明治大学文学部卒業。 小学5年生から詩作をはじめ、 高校1年生のときに読売新聞の投稿欄で五行歌と出会う。 現在、月刊誌『五行歌』同人。 詩歌以外にも、朗読イベントへの参加やウェブメディアでの連載を積極的に行っている。
◆◇目次◇◆
第一章 吐息の膜
第二章 秋の鱗
第三章 雲の額縁
第四章 深緑の氷山
第五章 星の精
第六章 生きている証
第七章 破壊と誕生
跋 文 草壁焔太
あとがき
繊細でありながら、果てしなく勇敢なことば。
痛みにも目を背けることなく、世界を信じて、よりそっている。
詩人 文月悠光
◆◇跋文より◇◆
”最初に編まれた草稿を見たとき、私はある展覧会にきて、いままでにない美を見たという気がした。彼女の歌は色彩的で、彼女の心をとらえた物の色が彼女の祈りを帯びて美しい。その物に対する愛があるからであろう。
(中略)
私より五十歳以上若いこのうたびとは、幼い頃から、生きること、死ぬことに 怖さを覚え、生きている証として詩歌を書き続けて来たという。彼女が物の美しさを保証するように歌を書くのは、まわりの物を自分自身のように感ずるからであろう。
『壬生義士伝』の武士のように、歌への志を持って生きたいという意思。これも嬉しいことだ。だから、歌がいつも鮮しいのであろう。その意思の変わらぬかぎり、いつまでも応援し、その示す歌から想像もできないような感動を味わいたい。
(五行歌の会主宰 草壁焔太 跋文より)
◆◇著者あとがきより◇◆
人それぞれの生き方によって、投影されるものは違う。
草壁焔太先生がよく「人柄が良い歌を書かせる」とおっしゃる。今後の私の生き方、それによって培われる人柄次第で、歌は変わっていくのだろう。
プロジェクションマッピングは、実物に映像を投影して新たな世界をつくりだす。読んでくださる方にとって、私の歌がそんな効果を持つものになっていきますように。
身体を
ちぎっては捨て
ちぎっては捨て
道に落としてきたのに
まだ私を見つけてくれないの?
蜜を産み
甘くなった
りんごのように
恋を宿し
やさしくなる
空に灯る
蠟梅の黄色
肺に入る
氷のような空気を
溶かすほどの光
もみじ色や
いちょう色の魚が
空を泳いだのか
道端に落ちる
秋の鱗
墨をぬって
和紙をおしあてよ
心が傷だらけなのは
人生の版画を
刷るためなのだから
クジャクの背
大きな扇はまるで
一筋一筋
電気が通った
プロジェクションマッピング